●主張・活動の紹介

 

真に国民の期待に応える老人福祉の構築を
=05年の介護保険制度全面的見直しを控えて=

21・老福連の政策提言

もくじ|2|

       

2・これからの老人福祉を考える基本
  最大の争点、命題は何か=権利としての老後保障を

 昨年夏に、厚生労働省老健局長の私的研究会の報告がとりまとめられ、2015年をめざす老人福祉の方向性が取り沙汰されています。内容的には多岐にわたっていますので全てにわたっての見解は記せませんが、特徴的には玉石混合の内容となっていることです。
一つは、これからの福祉サービスのあり方として、遅きに失したとはいえ「個の尊厳」を守る視点の強化と、そのことを基本とした多様なサービスを必要としていることは、多くの国民の願いであり当然必要なことです。そのもう一方で、老人福祉の現場に携わる者からすれば黙過できない既存の老人ホームに対する過小評価や福祉(公的責任)の一層の後退を招く方策が提案されるものとなっています。
「特養には温かみがない」とか「日課を中心とする業務」との謗りは、現場職員の努力や奮闘を無視すると共に、職員配置基準や指導監査要領によって厚労省が蒔いた種であることやその責任を一切棚上げする無責任極まりない発言、評価です。
 将来の発展方向の中心として示唆される「個の尊厳」を守る援助を行うため、限られた職員数や居住条件のもとでも「個を尊重」し「プライバシー=人権の尊重」を目指し先駆的に取り組んできたのは特養を始めとする現場職員にほかなりません。グループホームケアもユニットケアも個室提供(全室個室に否定的だったのは当時の厚生省)も、小規模多機能施設もサテライト事業も全て「利用者の権利擁護と現状より少しでも豊かな生活保障を」と願い、奮闘してきた現場職員の創意と努力によって築かれてきたのであり、そのことをまずもって大きく評価すべきです。
 さて、その上にたって、制度改革の焦点が、あたかも「大規模収容型施設」対「小規模多機能、地域密着型施設等の第3のカテゴリー」にあるかのような論調が醸し出されていますが、その裏には「住居費や日常生活費は当然本人負担」とする費用負担のことや設備、人員基準等、制度の根幹部分は不透明であったり、隠されていたりしています。その本質を見失うことなく、今日、緊急に対処すべき課題は、全ての高齢者が真に平等な制度として利用することができ、かつ、憲法に保障された生活を営むことが保障される制度を確立することではないでしょうか。
 福祉はかつての救貧救護の時代を経て、広く全ての国民を対象とするものとなってきました。いわゆる福祉の一般化、普遍化です。それは、日本の社会進歩、福祉の質的な発展として当然のことでもあります。しかるに、介護保険制度や最近言われている新たな政策方向は、ホテルコストの徴収をはじめ一層の利用者負担増の道であり、結局は低所得者をサービスから締め出すもの以外の何物でもありません。又、美しい言葉で飾られる第3のカテゴリーなる施策も、サービス利用時の費用負担はもとよりホテルコストの負担、要介護区分による支給限度額やヘルパーの「べからず集」が如き運営基準によるサービスの利用制限のもとで、いかほど「尊厳ある」「在宅での暮らし」ができるのでしょうか。
 いま、美しい言葉に惑わされることなく、又、一部の中高所得層にとっての利便だけを保障するのではなく、全ての高齢者にとって権利としての老後保障と真の社会的介護を実現することが求められています。
そのように考えますと、今日直面している課題、すなわち制度改革の最大の焦点は「公的福祉の確立や応能負担によって全ての人に権利としての福祉を確立する」か、それとも「本質を覆い隠し、薔薇色に描かれる新しい施策によって公的責任の一層の後退と限りない受益者負担という福祉の後退に拍車をかける」か、ではないでしょうか。

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