●主張・活動の紹介

 

真に国民の期待に応える老人福祉の構築を
=05年の介護保険制度全面的見直しを控えて=

21・老福連の政策提言

もくじ|4|    

4・介護保険制度の改善のために=21・老福連の提言

 以上の福祉制度の根幹にかかる基本的な視点や見解の上で、介護保険制度の有り様についても言及する必要があります。
 私ども21・老福連は、2005年には全面見なおしが予定されているという状況のもとで、介護保険制度を下記のとおり改定することにより、国民生活を守り、誰もが安心して老いることのできる社会保障、社会福祉制度を確立することが必要であると考えるものです。

@社会福祉(老人福祉)と介護保険=介護保険は老人福祉の一部
 ア) 介護保険制度はあくまで老人福祉の一部であり、介護を中心とした限定的な施策であることを明確にする。
 イ) 老人福祉は国民の権利として全ての人が平等に福祉援助を受けることができるものとして公的な責任において整備、発展させる。
 ウ) 介護保険制度は「介護」のみに限定したサービスとして適用されるものとする。但し、施設サービスは「生活と介護」が一体的に提供されるものであり、包括的なサービス事業としてこれを保障するものとする。
 エ) 家事援助、配食サービス、介護予防および生活を支援する諸施策は老人福祉法にもとづく事業として拡充する。
  ・これらの公的福祉事業は、地方公共団体の事業として、地方公共団体が実施、または、社会福祉法人等非営利団体に委託することができるものとする。
  ・これらの事業にかかる費用は、これまで同様に国が1/2、都道府県1/4、市町村1/4によって運営するものとする。

A要介護認定制度について=要介護認定は不要
 認定より専門的で良質なマネージメントを
 ア) 膨大な費用と労力を費やし、利用者にとっては無意味で利用制限につながる要介護認定は廃止することを基本とする。
・要介護認定は二重の足きりを行っており、著しい不平等を作りだしている。
 ○認定時の「介護の手間」なる時間は、最高の要介護Dで110分であり、それ以上は打ち切られている。
 ○区分支給限度額によるサービス利用の上限設定
・在宅サービスの区分支給限度額に対する利用率は全国平均で僅か40%であり、それで充足される人と、限度一杯にサービスを受けても不足する人もあり、「必要な人に必要なサービス」を提供するものとなっていない。
 イ) 認定作業等事務経費に約600億円(03年度国庫補助予算305億円=しかも最近は一般財源化することで地方自治体への負担を強いる計画となっていますが)という膨大な費用がかかっており、これを給付や介護保険外の公的な老人福祉施策に回すことで福祉増進を促進する。

B介護給付を巡って=積算根拠を明らかにし、福祉事業に相応しい給付を
 ア) 給付額の積算根拠を明かにすることこそ先決であり、その情報公開を強く求める。
 イ) 専門性を尊重し、専門職に相応しい職員処遇とその専門職による適切な生活援助が保障されるに足りる給付費として、又、職員配置基準を大幅に改善した上で算定するものとする。
 ウ) 当面の改善策としては以下の事項を行うものとする。
・在宅の要介護認定者への給付限度は一律とする。
・施設サービス利用者は区分に関わらず施設種別毎の給付とする。
・その上で、給付限度内では生活、介護が困難な場合や特殊な事情がある場合には、公費による加算制度を創設する。

C保険料、利用時の負担=著しい逆進性を改め応能負担原則に

 ア) 保険財源について、国の負担を2分の1、県及び市町村で4分の1の負担とする。
 イ) 保険料については著しい逆進制を改め、応能負担を基本とする。
 ウ) 利用時の負担についても応能負担原則を踏襲したものとする。
 エ) 低所得者への減免制度を効果あるものとするため、適用要件を緩和する。
また、減免にかかる財源は全て公費によるものとする。
なお、居住福祉型特養のホテルコスト減免は介護保険によって負担しており、即刻公費負担に変更すること。

D特養の役割=社会的介護の中心的な担い手として
 ア) 公的な老人福祉の中心を担う為、莫大な社会資本を使って設置されてきた歴史的な推移と役割を尊重し、これからも公的責任と社会的介護の中心的役割=中軸を果たす施設として位置づける。
 イ) 待機者対策  待機者0を目標に掲げる。その上で、当面、緊急に10万人分の増設3ヶ年計画を策定し、これまでと同等の4分の3の公費による建設補助によって整備する。
 ウ) 入所基準  現行の入所指針は廃止し、緊急必要度の高い人の判定や入所促進、入所保障は行政の責任において行う。
 エ) 特養の役割・機能  特養が、いかなる重度障害であっても介護と生活援助を行うことのできる「生活の施設」=「終の棲家」であることを明確にし、それに相応しい人的配置や施設機能を維持発展させる。
その上で、サテライト方式を始め小規模特養を弾力的に認める。
なお、グループホームは痴呆性老人対応のみとせず、障害をもった全ての高齢者を対象とするものへと改定する。
 オ) 古い施設の改修等  プライバシー=人権尊重のため、全ての特養を個室化するための10ヵ年計画を策定し、公費補助を中心とした方策を講じる
 カ) 医療機能に関して  障害をもった高齢者施設においては適切な医療機能(日常的な健康管理、初期治療やターミナルケア等)及びリハビリ機能の強化は絶対的に必要である。従って、医師、看護師、リハビリ訓練士の配置基準を拡充する。

E養護老人ホームの役割=老人福祉のセーフテイネットとして
 ア) 要介護度という尺度では介護が必要でないとされた人にも福祉サービスを平等に享受できることは国民の権利であり、そのような施策は絶対に必要である。養護老人ホームは、高齢により虚弱となり、あるいは活力が衰え、又はアルコール依存や精神上の問題をかかえたり、かつ、適切な見守り等を行う者がいない、あるいは、家族との生活・地域での生活に支障をきたしている人が、人間らしく生活することを保障する制度として、今後とも不可欠な施策である。
 イ) 措置から契約への大きな流れがあるが、全てを要援護者と事業者の契約任せにすると、手続き能力のない者の「放置」や事業者による「面倒な要介護者」の「排除」は免れない。国のセーフテイネットとしての機能を考えれば契約制度はそぐわず、公的責任(措置制度)によって運営を行う。
なお、措置制度の適用にあたっては過去の硬直的対応を改め、適切なマネージメントを行うことにより利用者の希望の実現や選択の自由を保障する。
 ウ) 現行制度では養護入所者は介護保険制度が利用できないが、介護が必要となればこれを利用できるものとする。ましてや特養への入所が重介護を要件とする方向へと進んでいる折り、被保険者としての権利擁護からしても当然の方策である。
 エ) 養護老人ホームの現状は劣等処遇的な性格を残しており、これを改定すると共に、居住環境や設備基準、職員配置基準等を改善することにより「生活の場、生活支援の施設」として充実させる。

Fケアハウスの役割=「安心の住まい」提供を
 ア) ケアハウスは、独居や老人世帯等の家族形態のもとで、プライバシーを尊重した住居提供と食事や入浴準備等の家事援助、緊急時の対応や相談援助を行うことにより可能な限り自立した生活を保障する施設である。しかも、独居や老人世帯等の世帯構造は今後も一層増えつづけることは容易に想定でき、当面ゴールドプラン21の整備計画を達成することを促進する。
 イ) ケアハウスにおける基準居室面積の減、ユニットケア方式はケアハウスの制度設立の趣旨にそぐわず、入居者の期待にも反するため反対する。むしろ居住環境(面積等)を改善することで利用者の期待に応えることが必要である。
 ウ) 職員配置基準を改善し、少なくとも10名に1名の職員配置(相談員+介護職)とする。
 エ) 介護が必要となった場合、介護保険による居宅サービスの利用、または特定施設入所者生活介護によって対応する。その選択は、あくまで入居者の意向を尊重しつつ施設が対応、援助するものとする。
なお、特定施設入所者生活介護にかかる給付は、介護の実状等も十分考慮し改善することが求められる。

G職員体制と職員の身分保障を=福祉の専門職に相応しく
 ア) 特養における職員配置基準を抜本的に改め、少なくともグループホームに準ずる職員配置とする。
・即ち、昼間で3対1、夜は10人に1人。
・入所者の重度化や医療管理の必要度の高まりに応えるため、職員配置基準にあたっては、介護職、看護職増員の上、別々に策定する。
 イ) 通所介護と通所リハビリテーションのように似かよった事業にも関わらず、職員配置に大きな差があるものもある。利用者本位の事業運営が行えるよう、また、その整合性が保てるように必要な改善を行う。
 ウ) 職員の身分、給与に関して
・職員配置基準にあっては「常勤換算方式」をあらためると共に、当面配置基準数の内8割以上は常勤職員とすることを原則とする。
・福祉職の資格にあっては名称独占と業務独占が混在しているが、基本的には国家試験による認定および業務独占を実現する方向で整理することが望ましい。なお、この場合には、当分の間必要な経過措置や無資格者への救済措置を講じること。
・福祉職俸給表を専門職にふさわしいものに
 福祉職俸給表は、その適用の有無に関わらず、施設運営や職員の給与等に及ぼす影響は多大であり、俸給表単価を専門職に相応しい対価となるよう改善する。

H民間営利企業の参入は限定的に
直接的な援助サービス事業は非営利団体で
営利企業は間接的な援助事業や有料ホーム、私的サービスを
 ア) 直接的な対人サービスとしての介護や生活支援となる福祉サービスの実施は、地方公共団体又は社会福祉法人を始めNPO、生協、医療法人等の非営利・公益法人に限定し、民間営利企業の参入は認めないものとする。
 イ) 生活支援の一部、有料老人ホームや私費による介護等サービスについては民間企業の参入を認めるとともに、公益性や公共性がある事業については必要な助成制度を確立する。なお、公的な助成を行う場合には、当然指導監査システムを確立する。
例えば、移送サービス、高齢者向け住宅、配食サービス、住宅改修、福祉用具の普及や貸与事業等である。
なお、これらの事業は介護保険制度による適用ではなく、公的な福祉施策、行政施策として実施することが必要である。

I医療、福祉、介護保険制度の整合性を 
 住む場所で発生する差別や権利侵害の是正を
  高齢者の生活支援にあっては医療、公的福祉サービス、その一部としての介護保険等が十分に差別なく利用できるシステムを確立しておくことは、権利として、また、平等という観点からも当然必要不可欠のことである。しかしながら、介護保険制度施行や近年の動向として医療保険の適用や介護保険制度の利用に著しい差が生じている。 従って、当面次の事項を改善することが必要である。
 ア) 利用する施設サービスによって医療サービスに差異(いわゆる医療にかかる費用のマルメ、医療保険の適用や差別的な医療給付等)があることは矛盾である。高齢者がどこに居ようとも、どこで暮らそうとも医療保険が平等に適用できるように保障する。
 イ) 介護保険制度における施設サービスは包括的サービスとして介護保険の居宅サービスが利用できないとしても、在宅と位置づけられるグループホームや介護保険外事業の施設である養護老人ホームや軽費老人ホームの入所者等にも、必要な医療、福祉、介護サービスを等しく利用できるよう保障する。

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