●緊急政策提言

 

私たちは、国の責任によって、誰もが無理のない負担で、 尊厳ある人生を送ることのできる介護保障制度を求めます。

                    2004年8月5日
21世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会

介護保険制度が始まって4年余りが経過しました。介護保険制度は、当初から5年目には全面的な見なおしを行なうことが決まっており、最近よく新聞などにも報道されていますように、大きな改革が行われようとしています。
 その中味はいろいろ取り沙汰されていますが、サービス利用時の個人負担を現行1割から2〜3割にするとか、ホテルコスト(住居費や水光熱費)の徴収、軽介護者のサービス利用制限など、負担の増とサービス利用の制限ばかりが目に映ります。また、障害福祉との統合や被保険者を20歳からとする案もでています。先の国会でも大きな論議になりました年金改革にも共通しますが、私たちにとって本当に良くなるのかは定かでないままに結論だけが先行しているように思えます。
 私たちは、今一度、原点に立ちかえって、必要な時に必要なサービスを受けることができ、誰もが安心して人間らしい暮しと尊厳が守られる制度を国の責任において確立することを切に要望するものです。
 私たちは本年1月より「真に国民の期待に応える老人福祉の構築を」と題した政策提言を行なってきました。その上で、介護保険制度全面見なおしの論議が様々な角度から行なわれている今、老人福祉の現場に身をおく者として、切なる要望として下記の事項を求めるものです。

全国の老人福祉に関係する皆さん
全国の福祉サービスのご利用者、ご家族の皆さん
私たちの要望事項に、是非ともご賛同いただき、真に国民の願いに応える公的な介護保障制度に改善されるよう、共に力を合わせていこうではありませんか。

 

 

介護保険制度全面見直しにむけての要望事項

1、 無理のない負担で、誰もが安心してサービス利用ができ、人間らしい暮しと尊厳が守られる制度に改善すること。
 1) 保険料負担が増大しないよう国の負担を2分の1に引き上げてください。
 2) 保険料負担は所得に応じた累進制を拡大し、また、減免制度を充実してください。
 3) 社会福祉法人減免制度を拡充し、自治体まかせにせず、国の責任で適用範囲の拡大や助成制度を充実してください。
 4) 介護費用にかかる利用者負担の2〜3割への引き上げ、特養ホーム入居者食費の全額自己負担への引き上げをやめ、所得に応じた利用者負担や減免制度を拡充してください。
 5) 養護老人ホームは、老人福祉のセーフティネットとして、公的責任(措置)による入所保障を継続するとともに、ケアハウス同様に介護保険の在宅サービス利用を可能にしてください。

 

2、 軽介護者(要支援、要介護1など)への利用制限をやめ、誰もが必要なだけの援助が受けられる制度にすること。
 1) デイサービスやホームヘルプ事業は介護度に関わらず在宅支援に欠かすことのできないサービスです。従って、要支援、要介護@高齢者のデイサービスやホームヘルプサービスの利用を制限しないでください。
 2) 特養ホームの入居者を重介護者に限定することにより、施設利用を必要とする高齢者を排除しないでください。
 3) 要介護度の低い人の介護保険サービスの利用を排除して介護予防にすりかえることをやめて、生活支援施策を拡充するとともに、必要な介護予防の施策は公的な責任によって実施してください。

 

3、 特養ホームの増設と個室化など施設整備を国の建設費補助によって促進すること。
 1) 特養は24時間生活支援する施設として、終いの棲家として、期待は一層高まっています。また、在宅サービスや小規模多機能施設のみで生活を支えることの困難な人が急増しています。そして、福祉施設は、安心して暮し続けることのできる地域をつくる中心的な役割を担っていることをふまえ、入所希望に応じられるだけの特養ホームを国の責任による建設費補助を元に戻して、緊急に増設してください。
 2) 最近言われている小規模多機能施設などを含めた各種の福祉施設を、一定の生活圏域ごとに、必要に応じてバランスのとれたものとし、建設費補助制度の充実により計画的にすすめてください。
 3) 既存の入所施設は旧基準の雑居部屋が大半を占める現状を踏まえ、すべての特養ホームおよび養護老人ホームの個室化を緊急かつ計画的にすすめてください。

 

4、 利用者の尊厳ある暮しが提供できるよう職員配置を改善し、また、職員の専門性と資質の向上を保障できる介護報酬にすること。
 1) 特養ホームなどの生活施設は介護職で2対1以上の職員配置基準にするとともに、重度化やリハビリ強化に対応した医療職の配置ができる介護報酬としてください。
 2) 居宅支援事業やデイサービス、ホームヘルプなど各種の在宅福祉分野の介護報酬を、十分な職員配置と安定的雇用ができるように改善してください。

 

5、 来年春で切れようとしている介護保険発足前からの特養ホーム入所者(旧措置者)の特例措置を継続すること。
 1) 自立、要支援の旧措置の方にも、引き続き入所を継続してください。
 2) 特養ホーム旧措置入所者の費用負担は、軽減措置の終了により大幅な負担増とならないような利用料体系と減免制度にしてください。

 

6、 誰もが安心して暮し続けることができるよう、憲法に則り最低生活の保障と個人の尊厳が守られる総合的な社会保障制度を確立すること。
 1) 障害福祉は介護保険との「統合」や「活用」が示されていますが、性急な結論は避けて充分な論議を尽くしてください。そして、全ての国民が安心して暮し続けることができるよう、所得や住宅、医療、介護、生活支援などにかかる総合的な社会保障制度を確立してください。
 2) 保険料や利用時の負担、ホテルコストや食費など果てしなく利用者負担が増大しようとしていますが、負担能力によって利用の差別や利用制限が生じることのないよう抜本的な対策を講じてください。
 3) 憲法25条は、社会保障は国の責任で行なうべきものであることを明確にしています。その責任を地方自治体に転嫁し、地域間格差を広げることにつながる一般財源化は行わないでください。

以上

 

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