●主張・活動の紹介

 

真に国民の期待に応える老人福祉の構築を
=05年の介護保険制度全面的見直しを控えて=

21・老福連の政策提言

もくじ|1|

1・はじめに

 日本の老人福祉制度の根幹は、措置制度を軸とする公的責任による福祉制度から、4年前の2000年4月に介護保険制度が施行され社会保険方式へと大きく変化することとなりました。
 「措置から契約へ」と表されますが、その実は「税から保険へ」移行したのであり、老人福祉法に定められる公的責任による福祉=即ち国と国民の信義=契約が一方的に解除され、財源問題として保険制度に移行しただけではないでしょうか。
 そして昨年の4月には制度にもとづき保険料や給付費の改定が初めて行われました。保険料は全国平均で13%を超える大幅増となり、高齢者の生活を一層圧迫するものとなっています。又、給付費は、会計基準の変更やそれに伴う財務構造、職員配置基準と専門職に相応しい身分・給与等の問題にはふれることなく、あたかも「儲かっている」から減らすという傍若無人な理屈で大幅な減額としました。その中で、矛盾が激化し、誘導が必要なごく一部の事業に限ってのみ微々たるものですが増やすという、極めて露骨な政策的、意図的な改定となっています。
 加えて、介護保険法は、その制定時に発足から5年後の2005年には見直しをすることを定めており、厚生労働省は、去る1月8日には、その具体化のために介護制度対策本部を発足させました。
 厚生労働省は、介護保険制度は順調に推移していると言いますが、現実は如何なるものでしょうか。生活難に悩む多くの高齢者が保険料負担や利用時の負担に耐えかねて悲鳴をあげていること、特別養護老人ホームの入所待機者は23万人にもなっていること、ホームヘルパーや老人福祉施設で働く職員など福祉事業従事者は、労働強化とパート化などの身分の不安定化、低賃金が進んでいること等々、深刻な実態には、見て見ぬふりをしています。また、多くの人からの「要介護認定」に対する不信も未だに拭い去られていません。
 このような実態とは裏腹に、すでに次回改定にむけての準備が進められ、この間報道されている「見直し」では、20歳以上からの保険料徴収、利用者負担を3割にする、介護度の低い者を介護保険給付からはずすなど、高齢者と国民に負担を押し付けることしか考えていないと、言わざるを得ない内容です。
しかし、求められる制度の「見直し」は、この間明らかになった多くの問題点こそを改善するものでなければなりません。
 さて、介護保険制度移行3年余の実像とは何だったのでしょうか。一口で語ることはできませんが、特徴的には、確かに介護サービスが一定増加し、利用しやすくなったことや、中高所得層にとっては安い費用でサービスを受けることができるようになりました。その一方で、被保険者と利用者の負担の増加、要介護認定と区分支給限度額による利用制限、入所したくても直ぐには叶わない特養ホームという現実の姿に見られるように決して薔薇色の制度でなかったことは明らかです。とりわけ、低所得者や家庭での介護力の脆弱な高齢者にとっては、十分な介護を受けることができない状況が生まれ、それも自己選択=自己責任として放置されていることです。このように、最も重要な問題は、公的な責任がどんどんと後退、形骸化し(本会03年4月アンケートより・公的責任の後退=76%)、逆に、自助自律として自己責任のみが大きくなろうとしていることです。
 戦後、国民の共通の願いとして、福祉に関わる先人が培ってきた公的な福祉制度が失われようとしているとき、安心して老いることのできる社会=権利としての老後保障や、必要な時に必要なだけの介護サービスを受けることのできる福祉サービスの構築と社会制度こそ必要だと痛感しています。
 私ども、21老福連は、来年=05年の介護保険制度全面見直しの時期を控えた今日、より良い制度を求め、老人福祉の制度を拡充するため、当面、次の事項を実現することを求めるものです。

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